飯能市立博物館で、収蔵品やパネルの展示を見学してきました。同館は、さまざまな感染症予防対策を行いながら、展示やイベントなどの活動を継続しています。今回の催し物は、「収蔵品展 てぬぐいの中の飯能」とパネル展「飯能と渋沢栄一」ということで、それぞれ私の研究テーマや授業内容と関係することもあり、閲覧時間を短く切り上げるなど注意を払いながら勉強してきました。
展示室では、最近あまり目にすることがなくなったさまざまなデザインのてぬぐいをみることができました。てぬぐいは、かつての生活必需品ですが、特に昭和30~40年頃までは、記念品やお店の宣伝などのために多く配られていたようです。また、幕末維新の際に起きた飯能戦争、あるいはそこで養子の渋沢平九郎を亡くした渋沢栄一と飯能の関係などを示す資料も興味深く見ることができました。
私は、地域に展開する産業の歴史を研究していることもあって、今回のように、ときどき各地の資料館や博物館を見学することがあります。そしてそのたびに、地域という生活や暮らしの範囲で行われるさまざまな活動が、世界や国全体の社会、政治、経済、文化などの動向と密接に結びついて展開してきたことを教えられます。てぬぐいの普及と衰退は、おもに綿布生産の拡大やタオル?ハンカチの導入など、国レベル、あるいは国境を越えた生産と消費構造の変化により説明されることでしょう。飯能戦争は、幕末における西欧からの衝撃に対する反応と摩擦の中で起きた悲劇とみることもできます。
おそらく、各地域の歴史の中には、広い視野と識見に基づき、地域レベルで事業を起こし、あるいはそれを転換させて、人々の暮らしや生活を支えた人物の活躍が散見されるはずです。本学のミッションの一つは「地域の中核的人材の育成」にありますが、それを行うためには、単に知識を詰め込むだけの教育ではなくて、さまざまな角度から物事をみつめ、既存の枠組みを超えた新たなアイデアを生み出す力、問題解決に向けて粘り強く努力を続ける力などを培う必要があります。本学が、地域の皆さまのご協力を仰ぎながらアウトキャンパス?スタディに力を入れてきたのも、そうした考え方に基づいています。
残念ながら、現在、こうした地域を舞台にした教育の一部は、感染症の拡大により制約を受けておりますが、十分な安全対策を講じながら、できる限り再開?継続していきたいと考えています。地域の皆さま方には、今までのご協力について心よりお礼申し上げますとともに、今後とも本学の教育にご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。